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2007年5月20日 (日)

『博士の愛した数式』

『博士の愛した数式』は何度も読んだ本だった。昨夜はテレビで放映された映画を観た。
あの博士が、どうしても祖父の実弟と被って、40年以上も前の事々を思い出した。

祖父の実弟は、『かっちゃん』と呼ばれていた。
明治の終わり、5人兄弟の末っ子として生まれ、「かつは、ほんまに勉強が好きやった。わしとちごて、生真面目で」と祖父も言っていた。
「優しい子ぉやったんや。頭がようて(良くて)、兄弟の中で、一番神経が細かかったさかい、あないなったんかもしれへん」というのは祖母の言葉だ。
20歳を過ぎた頃から、幻覚幻聴がひどくなり、戦後、精神病院に入院した。
私がその病院に見舞いに行っていたのは、5歳~15歳くらいの間だったように思う。
祖父母に連れられ、面会に行くと、毎回、初対面のような顔をした。
兄である祖父に「今度来るとき、わら半紙、持ってきておくんなはれ。それと、万年筆、前に持ってきてくれたんは、あきまへんわ。インク、吸い上げるのが宜しわ」と急いで用件を伝えた。
この日、かっちゃんは面会室に、らくだのシャツとパンツで現れ、シャッには万年筆で書かれた文字がびっしりと埋め尽くされたいた。
「今は、天文学をやってるんで、とにかく、紙が欲しい。忘れんといておくんなはれな」
かっちゃんが安心して話ができる人は、限られていた。
私は拒否されることはなかったけれど、目を合わして会話をした記憶がない。
でも、行くたびに、勉強の話を手短に話すかっちゃんが好きだった。
祖父はそんな実弟を、ここで生活するしか仕方がないと思いながら、時代の移り変わりも知らず、20歳で記憶が止まっている姿が不憫にも思え、
「かつは、女も知らんとなぁ」と病院からの帰り道、独り言のように呟いた。

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