大阪弁:とんがらし(唐辛子)
明治生まれの祖父は、孫の私に対して、とにかく構いたがり(世話をしたがる人)だった。
殊に、衣・食にはうるさかった。
祖父とおうどんを食べるときは、薬味の量に気をつけた。
「子供の時分に、とんがらし(唐辛子)をよぉけ入れて食べるもんやない」
小学生の間は、出されたおうどんに七味唐辛子をかける量を見て、多すぎると、「そないかけて、食べられるんか?」と問われた。
自分でも『しもた。多かったみたいや』と思っても、自分でしでかしたことなので、「気遣いないもん(大丈夫よ)」と言って食べた。
何度か、食べ終わった丼の底に、紅い七味唐辛子の粉が沈んでいることもあった。
言葉には出さないが、『ほれ、みてみ。辛かったのに』と思っている祖父の目を感じた。
ある時、辛みのきつい一味唐辛子をかけ、これが思いの外刺激が強かった。
一杯のおうどんを食べている間に唇の周りが痺れてしまう程だ。
この時も、祖父の『ほれ、みてみぃ。わしはあかんと思てたんや』の視線を感じたが、何でもない風にやせ我慢した。
祖母は表情も変えず、思春期に入ろうとする孫に、さらりと「お茶、たぁんと飲んどき」と言いながら、丼鉢を下げた。
もう、40年程も前の話だ。
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